アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」の感想
鴻上尚史さんの人生相談を読んで気になっていて、先日購入しました。
実は、初めてアガサ・クリスティの作品を読みました。
小学校の頃は主にモーリス・ルブラン(南洋一郎先生訳)と江戸川乱歩全集を読んでいて、クリスティ作品は特に理由もなく読んでいませんでした。
それが、アガサ・クリスティ作品のパロディになっている「カササギ殺人事件」を先に読んで、「あれ?どうして今まで読んでなかったんだろう」と思ったのです。
観察力や心理描写がすごい。他の作品も読んでいきたいですね。
あらすじ(春にして君を離れ - Wikipediaより引用)
1930年代。地方弁護士の夫との間に1男2女に恵まれ、よき妻・よき母であると自負し満足している主人公ジョーン・スカダモアは、結婚してバグダッドにいる末娘(次女)の急病を見舞った帰りの一人旅の途上にある。
荒天が一帯を襲い、交通網は寸断される。列車の来るあてのないまま、砂漠のただなかにあるトルコ国境の駅の鉄道宿泊所(レストハウス)に、旅行者としてはただ一人幾日もとどまることを余儀なくされる。何もすることがなくなった彼女は、自分の来し方を回想する。やがて彼女は、自分の家族や人生についての自分の認識に疑念を抱き、今まで気づかなかった真実に気づく。
感想
最初は退屈な話かと思ったのですが、どんどん引き込まれ、一気に読んでしまいました。衝撃的作品です。
こういう人いる・・・私の身近にいました。
自分が一番正しく常識人だと思っていて、自分の希望を通すために「あなたのためよ」と押し付けてくる。
前の職場の人と、湊かなえ先生の『豆の上で眠る』に出てきた母親も思い出しました。
自分と他人との認識のズレ。
主人公のジョーンは自分が家事の采配をとても上手く振るっていると満足しているようですが、よく読んでみると、実際は・・・
夫と子供の気持ちを理解しない。料理人の料理を褒めずに小言ばかり言う。
過干渉の割に何もしていない。
「ロマンチック・サスペンス」として紹介されていますが、私にとってはサイコ・ホラーに感じました。
レストハウスに何日も足止めされる場面では、
暇すぎるジョーンの視点で自分について深く考えていく思考をなぞれるところが面白いです。(これ、「意識の流れ」ってやつだ~)
夫の視点で語られるエピローグにびっくり。
まさかそんなラストだとは予想していませんでした。人間て怖い。
怖いところは、こういう人になりたくない・ジョーンを反面教師にしたいと思っていても、後で読み返したときに自分は実際どうなのか?分からないということです。